やる夫で学ぶオブジェクト指向以前

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6.何のためのイデアか?


      ____
     /    \
   / ヘニヾ゙リン \(;;;;;(
  /=▲▼--▼▲=) ;;;;)  では、対話とは何だったのかを整理しておこう
  |    /(__人__)ヽ ;;;/|
  \    `⌒┃l;;;; /   まず、俺たちは「対話の材料」を挙げた。今回は三つだな
  /´`''" '"´``Y'・"``'j⌒ ヽ
 { ,ノ' i| ,. ,、 ,,|,,. 、_/´ ,-,,.;;l   ・女性は美しい
 '、 ヾ ,`''-‐‐'''" ̄_{ ,ノi,、;;;ノ
  ヽ、,  ,.- ,.,'/`''`,,_ ,,/   ・筋肉は美しい
   `''ゞ-‐'" `'ヽ、,,、,、,,r'
     ,ノ  ヾ  ,, ''";l      ・力士は美しい
    /=====、 ....====i、
.
                         ____     ━┓
                       /   ― \    ┏┛
                       /   (● )  ヘ\  ・
                    |   (⌒   (● ) |  主張として挙げたのは上二つだけのはずだお
                     ヘ     ̄`、__)  |
                       ヽ           |  やる夫が相撲見てるのは事実だけど・・・それに後出しだし
                     ./∩ノ ⊃   _/
                      /./ _,)   `丶
                      (___/    1   |


         ____
       /    \       事実も「対話の材料」に入る。
      / ヘニヾ゙リン \
    /=▲▼--▼▲=\    事前に提出するのが望ましいが
    |    /(__人__)ヽ   |
    \    `⌒┃   /    全部の材料が最初から揃うほど都合よくはいかんだろう
            ・
.
                ′
        ____  、´
       / ヘニヾ゙リン\      おっと大事なことを忘れていた。追加の材料は「却下する権利がある」
     / =▲▼--▼▲\
    /    /(__人__)ヽ \    後出しで材料を追加し続けたら対話が終わらないからな。
    |       `⌒┃    |
    \        ・   /    却下する理由は欲しいところだが「事前に提出されてなかったから」でもいい


      ____
     /    \
   / ヘニヾ゙リン \(;;;;;(
  /=▲▼--▼▲=) ;;;;)  次に、ごく一般的な論理として
  |    /(__人__)ヽ ;;;/|
  \    `⌒┃l;;;; /   「すべての材料を満たせばそれはより確かな「美」である」こととした。
  /´`''" '"´``Y'・"``'j⌒ ヽ
 { ,ノ' i| ,. ,、 ,,|,,. 、_/´ ,-,,.;;l  論理には他にも考えられるが今回はこれでいいだろう。
 '、 ヾ ,`''-‐‐'''" ̄_{ ,ノi,、;;;ノ
  ヽ、,  ,.- ,.,'/`''`,,_ ,,/
   `''ゞ-‐'" `'ヽ、,,、,、,,r'
     ,ノ  ヾ  ,, ''";l
    /=====、 ....====i、


      ____
     /    \
   / ヘニヾ゙リン \(;;;;;(
  /=▲▼--▼▲=) ;;;;)   そして、条件を満たすために「材料」に修正を加え、採用に合意した。
  |    /(__人__)ヽ ;;;/|
  \    `⌒┃l;;;; /    この「参加者が材料の採用を合意すること」が非常に重要だ
  /´`''" '"´``Y'・"``'j⌒ ヽ
 { ,ノ' i| ,. ,、 ,,|,,. 、_/´ ,-,,.;;l    ・女性は美しい -> 人間は美しい
 '、 ヾ ,`''-‐‐'''" ̄_{ ,ノi,、;;;ノ
  ヽ、,  ,.- ,.,'/`''`,,_ ,,/     ・筋肉は美しい -> 肉体は美しい
   `''ゞ-‐'" `'ヽ、,,、,、,,r'
     ,ノ  ヾ  ,, ''";l        ・力士は美しい ->力士は美しい(合意の上そのまま採用)
    /=====、 ....====i、

 

                       ____     ━┓
                     /   ― \    ┏┛
                     /   (● )  ヘ\  ・
                  |   (⌒   (● ) |  合意なんて一々とるの面倒くさいお
                   ヘ     ̄`、__)  |
                     ヽ           |  同じ材料をとらなかったらどうなるんだお
                   ./∩ノ ⊃   _/
                    /./ _,)   `丶
                    (___/    1   |
.
         ___
       /    \
      / ヘニヾ゙リン\   材料を立っている場所にたとえよう。
    / =▲▼--▼▲\
    |    /(__人__)ヽ  | 別の材料を採用したときは、つまり別の場所に立っている
    \    `⌒┃  /
.
.
.
       / ̄ ̄\
     /   ヽ_   \
     (●)(● )   |             ____
      (__人__)     |             /      \
     l` ⌒´    |          ./─    ─  \
.     {         |          / (●)  (●)   \
      {       /          |    (__人__)     |
      ヽ     ノ          \    ` ⌒´     ,/
     /       ^ヽ           /             \
      |          |          |              |

 

そこから「美」へ向かって一歩踏み出してみよう
.
       / ̄ ̄\
     /   _ノ  \
     |   ( ●)(●)
     |     (__人__)
     |      ``⌒´ノ              ____
     |   .     }             /      \
     ヽ       .}              /   ⌒  ⌒ \
       ヽ     ノ           /   (●) (●)  \
     /      \          |     (__人__)    |           ―>美
     /  /     } |          \_    `⌒´  _/
    /  /.      | |         /         ヽ
    |  |      .|  |         |  |         |
    |  |       ||  |         |  |        | |
    (__)    |   |し__)        ヽ  ヽ       | |
       |   }  |              (_) _   |_)
       |   | /              |   / |   |
       |   |/               /   /  |   |
      (_⌒)              ヽ_⌒)   (_⌒)

 

 

美には近づいているが、相変わらず二人は別の場所に立っている
.
つまり、「美とは何か」を二人は共有していない
.
       / ̄ ̄\
     /   ヽ_   \
     (●)(● )   |             ____
      (__人__)     |             /      \
     l` ⌒´    |          ./─    ─  \
.     {         |          / (●)  (●)   \
      {       /          |    (__人__)     |
      ヽ     ノ          \    ` ⌒´     ,/
     /       ^ヽ           /             \
      |          |          |              |

 


         ___
       /    \
      / ヘニヾ゙リン\
    / =▲▼--▼▲\
    |    /(__人__)ヽ  |    同じ材料を採用したなら同じ場所に立っていると言えるな?
    \    `⌒┃  /
.
.
.
       / ̄ ̄\
     /   ヽ_   \
     (●)(● )   |    ____
      (__人__)     |   /      \
     l` ⌒´    | /─    ─  \
.     {         |/ (●)  (●)   \
      {       / |    (__人__)     |
      ヽ     ノ  \    ` ⌒´     ,/
     /       ^ヽ /             \
      |          ||              |

 

そこから「美」へ向かって一歩踏み出してみよう
.
       / ̄ ̄\
     /   _ノ  \
     |   ( ●)(●)
     |     (__人__)
     |      ``⌒´ノ     ____
     |   .     }    /      \
     ヽ       .}    /   ⌒  ⌒ \
       ヽ     ノ  /   (●) (●)  \
     /      \ |     (__人__)    |           ―>美
     /  /     } | \_    `⌒´  _/
    /  /.      | |/         ヽ
    |  |      .|  ||  |         |
    |  |       ||  ||  |        | |
    (__)    |   |し__ヽ  ヽ       | |
       |   }  |    (_) _   |_)
       |   | /     |   / |   |
       |   |/     /   /  |   |
      (_⌒)     ヽ_⌒)   (_⌒)

 

美に近づきつつ二人は同じ場所に立っている、つまり「美とは何か」を共有していることになる
.
       / ̄ ̄\
     /   ヽ_   \
     (●)(● )   |    ____
      (__人__)     |   /      \
     l` ⌒´    | /─    ─  \
.     {         |/ (●)  (●)   \
      {       / |    (__人__)     |
      ヽ     ノ  \    ` ⌒´     ,/
     /       ^ヽ /             \
      |          ||              |


                        / ̄ ̄ ̄\
                      / /     \ \
                     /  (●)  (●)  \
                     |    (__人__)    | なんかすごく当たり前のことを言われてるような
                     \    ` ⌒´    /
                     /              \
      ____
     /    \
   / ヘニヾ゙リン \(;;;;;(   すごく当たり前のことを言ってるんだよ
  /=▲▼--▼▲=) ;;;;)
  |    /(__人__)ヽ ;;;/|    プラトン著作は対話篇―主人公のソクラテスとゲストの対話で成立しているが
  \    `⌒┃l;;;; /
  /´`''" '"´``Y'・"``'j⌒ ヽ  ソクラテスは何かあるごとに相手に「この認識を採用して問題ないか?と」確認している。
 { ,ノ' i| ,. ,、 ,,|,,. 、_/´ ,-,,.;;l
 '、 ヾ ,`''-‐‐'''" ̄_{ ,ノi,、;;;ノ  プラトンが対話篇という形式を選んだのは「相手の思い込みをソクラテスにリセットさせる」
  ヽ、,  ,.- ,.,'/`''`,,_ ,,/
   `''ゞ-‐'" `'ヽ、,,、,、,,r'    ためだというのが定説だが、違う材料で同ところへ行くことはできないから
     ,ノ  ヾ  ,, ''";l
    /=====、 ....====i、     合意を得て対話を進める姿勢を示すためであるとも思う。

 

         ___
       /    \
      / ヘニヾ゙リン\
    / =▲▼--▼▲\
    |    /(__人__)ヽ  | 次に、同じ場所に立っているがそれぞれの「美」を持っていることにしてみよう
    \    `⌒┃  /
.
.
.
       / ̄ ̄\
     /   ヽ_   \
     (●)(● )   |    ____
      (__人__)     |   /      \
     l` ⌒´    | /  ─    ─\
.     {         |/   (●)  (●) \
美<-   {       / |      (__人__)   |  ->美
      ヽ     ノ  \      ` ⌒´   ,/
     /       ^ヽ /             \
      |          ||              |

 

そこから「美」へ向かって一歩踏み出してみよう
.
       , -―- 、
      /     \
      /  \_   |
     (●) (●)   |           ____
      (_人__)    /          /      \
      l`⌒´    /        /   ⌒  ⌒ \
      |      ヽ        /   (●) (●)  \
美<― __!、____/  \    |     (__人__)    |           ―>美
    /、 ヽ     r 、 ヽ   \_    `⌒´  _/
    ハ ヽ Y`l     |  >  Y  /         ヽ
   { ヽ_ゾノ     | レi i i}  |  |         |
   `¨´  ヽ    ハ  `'''   |  |        | |
         >   / ヘ     ヽ  ヽ       | |
        /  /ヽ  ヘ        (_) _   |_)
       _,/  / ご_ノ        |   / |   |
      ( ヽ /           /   /  |   |
       \__ノ            ヽ_⌒)   (_⌒)

 

二人はもう同じ場所に立っていない。「美」を共有していないんだ
.
       / ̄ ̄\
     /   ヽ_   \
     (●)(● )   |             ____
      (__人__)     |             /      \
     l` ⌒´    |          ./─    ─  \
.     {         |          / (●)  (●)   \
      {       /          |    (__人__)     |
      ヽ     ノ          \    ` ⌒´     ,/
     /       ^ヽ           /             \
      |          |          |              |

 

                            ____
                           /      \
                          /        \
                        /) ノ '  ヽ、       \
                      / .イ(ー) (ー) u     | あーつまり「生まれる前にイデアを見ている」というのは
                      /,'才.ミ) (__人__)       /
                     .| ≧シ' ` ⌒´        <
                    /  /                ヽ
.
         ____
       /    \
      / ヘニヾ゙リン \
    /=▲▼--▼▲=\    そんな事があるわけないと思ったろ?
    |    /(__人__)ヽ   |
    \    `⌒┃   /    まったく同一のイデアを事前に見て共有する必要があるんだよ。
     /´`"´``Y´´・""j⌒ ヽ
    {;;ノ´i、,. . ..|,, 、 、 ノヾ ;; ト  「同じ材料と同じロジックを使って同じ方向に進んで同じ結論を共有する」ためには
    / ;/i  __,人 _ _;;, ,/ヽ ヾ )
    ( .."ヽi、 ;;_ |^.. ;; ,i ,i` ノ;ノ  同じ材料を採用するという合意と同じ方向に進むための同じイデアが絶対に必要だ。
     ヽ iノヾ; 人__::": ヽ/"/
      ト \,ii== ===i!、/ /    ロジック―当時はロゴスだな。これはそのまま共有できる事になってる
      ,iヽ/  i i   \ノi、
      |    ,! !.     |

 

                               ,.へ
   ___                          ム  i
  「 ヒ_i〉           ミ   ミ    __  ゝ 〈
  ト ノ                     ミミミ  iニ(()
  i  {               _____         |   ヽ
  i ヽヽ    (ミ彡    /ヘニヾリン \        i  ノ  }   イデアは一つであるとか
  | :;:;:;:; i         /=▲▼--▼▲=\     {、:;:;:;:;:;λ
  ト-ー┤.      /   /(__人__)ヽ   \   ,ノ    )    不変かつ普遍であるというのもこのために作った設定だ
   ヽ   `` 、,_  |      ´ ̄`       |  '´ ハ  /
    ノ ノ   、´、,_\            /"   / /     今の「美」とちょっと前の「美」が違うものだったら
      ;、         ̄`゙゙゙゙`Y´"""´ ̄   /  ;
        ヽ、~  ヽ    :;:;:;:;:;|::::     ノ / ~ノ       別の方向に進むことになっちまうからな
         ヾ   ト   ........人........   / r´′:;
     / ̄二二二二二二二二二二二二二二二二ヽ
     | 答 |   イデアは対話を進める目印   │|
     \_二二二二二二二二二二二二二二二二ノ

 

                           ,  ¨¨¨¨¨
                      .  /      | il i  \
                       〃 u     i l| | | u ゙
                       {   (_人_)   !   ∨    設定とか言っちゃっていいのかお
                           |ililililil|       u !
                        \ 人ilililil}
                         ト、__、_        , イ
                      .  乂__|    ト .._ 「
                      .      |    人_ ∨
                      .      |        ∨
      ___
    /    \
   / ヘニヾ゙リン\ (;;;;;;(
 / =▲▼--▼▲ );;;;;)  いいんだよ。どうせ現代で真面目にイデア論を信じているのは作者だけだ
 |    /(__人__)ヽ;;;/
 \    `⌒┃/ /
         ・ノ


                         / ̄ ̄\
イデアの存在を信じてるってマジ?   _ノ  ヽ、   \
          ____            (●)(● )    l
.        /       \.          (__人_)     |   俺は割と本気で信じてるよ
.       /   ―   ―\.        ヽ⌒ ´      l
     /     (●)  (●) \      {         /   虚数が存在するのと同じくらい信じてる。
.    |       (__人__)   |         ヽ     /
    \.      ` ⌒´   /.        /      `ヽ   お前だって虚数の存在を証明できなくても
        >          <.         /. <⌒ <)))\ l
     /     /(((> ⌒> l          ヽ_ヽ、___ ,イ   電気工学の計算に虚数を普通に使うだろ?
     l.    ___/_ノ.        , ─l.      |- 、
.      l.      ー‐⌒ヽ⌒ヽ      l  /⌒ ̄ ̄ ̄  l
      ヽ、.        |_ノ       `/   , ─―──´
         ̄ ̄ ̄`ー ′         `ー ′

 

 

          / ̄ ̄`ヽ
        /       ヽ
         {   ー-       \                 それは何であるか、を議論するということは
         )  (●)    ', \
         (●)  -、    }  .` - 、 __           「何」を共有しているはずだ。そうでないと結論が出ても
         \(_,ト-'   リ   ',    `ヽ._
           >--、/´).ハ  リ_,.>-''、⌒``ヽ、     それはそれこれはこれ、にしかならないからな。
         /´  ヽ' ./´  },. -'/´    `     ハ
        /! ヽ     }`,¨´   i          ::.   }    だがこの話題にしている「「何」を共有しているという根拠」が
        / ,/ }   ;  ,ノ /  ヾ.{        ;    ハ
       {   ,ゝ. -'  ヘ./     〉‐- 、__.._ _,. -‐ イ,  }   見つからないんだ。
      {  、 }ヘ、    \    /´ .;        ヒ'" !
     ,/ゝ-、 _{  ',     ヽ.__{  ::   :'       } ,!
      /     ゝ、ヘ ',     (´  ``ヽ    :       ! !
    { ,... _:    ``〉', 、   ヽ、      ',     / /
    }'"  `ー‐- 、..⊿ムヽ ヽ、  `     ,} ゝ ,/ /
     {    _,. -‐'´   ヘ.  `、.___   ノ  メ、, ;/
      }'  ´ ̄     ,..._ゝ、、ヽ、`¨¨´ ./゙Y′i'
     ',ヽ     _,. '´/  ゝ、.___  ,/二)´  |
     ゝ-<二_メ'´        `¨`ー'    .リ
               }  ,.、      ',    ,/)ヽ
            /,ハ、`'′       ;   ,./ ,/ヽ∧


              ,. -‐- 、
             /       ヽ
           {     ,、 ',
           ヽ ノ `フノ-‐ュ',               近代哲学で共有を説明する説もあるにはある
           〈゙y'´ ´ '´,≠-,
                i     ,r ´i ` ー‐‐‐- 、 _       ―例えば論理的に導出できたなら結果的に共有できたと言える。
           /    ノ _ノ    ; _,-‐x'ニ=、 `丶.
       ,. -‐ァ′  /´ー=、_r‐‐='´ ゝ、   ヽ  ハ    だが「それは何であるか」の段階で「何」を共有できているか、
       /  /  / .,'     '.      ヽ    :  ゙i-、
      ,iゝ'´  , '   /     ;       `ヽ.  ム、.ム ヽ  これがさっぱりわからん。
      〃 / /   /     }           ,ハ爪⌒:´    ',
      ! , '´{    / o     ノヽ_   o  ノ ハ   ヽ  ノヽ ',  哲学は専門外とはいえ勉強不足だな。
     Y´    ,/ ゙ゝ--‐= ´ ゙i!  `¬==.´  ,ノ \  v ⌒ヽ!
     ゝ-、___ノ.  ,ノ {,. -‐¬! ̄` ¬ヤ ∨   `ー/    / }  ともあれ道具として使う分にはイデアはシンプルでいい。
              ゝ. i  i      ;  ____.ム   i       ,'   , ' リ
              ゙} ├ '´ ̄ ; :´    i.ノ !      {,.  '   /   ありがたいことに技術屋は証明できないものでも
             i ハ,... ...ノ,.ヽ.__.. '´i   !   , '     /
              {  {    ¨     リ、  |_  /     /    スジが通る範囲で使える。
            ゝ. ヘ       /:,.-‐‐' `¨   /
              人.\ヽ     ι/,.-     ィ}   近似式の正しさを証明できなくても有効な範囲で使えるようにな。
           /   `ヽ> 、.... -‐ ι',/> ,.、-- '

 

 

               / ̄ ̄\
              _ノ  ヽ、  \
            ( ●)( ●)   |        愚痴になっちまったな。この話はここまでにして
            (__人__)      | ../}
      _       ヽ`⌒ ´     | / /    __「同じ材料と同じロジックを使って同じ方向に進んで同じ結論を共有した」
   (^ヽ{ ヽ      {        ./ /  . / .ノ
 ( ̄ ヽ ヽ i      ヽ      / 厶- ´ /    とこまで話を戻そう。次の問題はこの「美とは人間の肉体である」
.(二 ヽ i i |,r‐i    ノ.   ヽ /     /
  ヽ   /  ノ  /    r一'´ ー 、   ̄ ̄ ̄)      を別のものに適用しても正しいかどうかだ
   i   {   イ―イ /   .`ー―. 、__ .〈 ̄ ̄
   ヽ. `ー '/   /           /\ \
      `ー '  ̄ ̄!           |  ヽノ

 

                         / ̄ ̄\
     具体的には?          _ノ  ヽ、   \
          ____            (●)(● )    l     人間の肉体は美しいってことは
.        /       \.          (__人_)     |
.       /   ―   ―\.        ヽ⌒ ´      l     やる夫の肉体も美しいってことだけど
     /     (●)  (●) \      {         /
.    |       (__人__)   |         ヽ     /     お前、自分の体が美しいって本気で言えるか?という話だ。
    \.      ` ⌒´   /.        /      `ヽ
        >          <.         /. <⌒ <)))\ l
     /     /(((> ⌒> l          ヽ_ヽ、___ ,イ
     l.    ___/_ノ.        , ─l.      |- 、
.      l.      ー‐⌒ヽ⌒ヽ      l  /⌒ ̄ ̄ ̄  l
      ヽ、.        |_ノ       `/   , ─―──´
         ̄ ̄ ̄`ー ′         `ー ′


                       / ̄ ̄\
   このぶよぶよの体で?    /  ヽ、_  \
        ____          (●)(● )   |     なんかすまん
       /      \        (__人__)     |
     /::          \     (`⌒ ´     |
    /::::::::::           \     {           |
   |::::::::::::::::::          |    {        ノ
    \::::::::::::::::       /     ヽ     ノ
   /::::::::::::::::::::::      |       ノ     ヽ
   |:::: |:::::::::::::::::::::::   |:: |      /      |
   |:::: |:::::::::::::::::::::::   |:: |


         ____
       /    \
      / ヘニヾ゙リン \
    /=▲▼--▼▲=\    それだけじゃいじめみたいだから俺からも材料を出そう
    |    /(__人__)ヽ   |
    \    `⌒┃   /    俺は両国に住んでるから道端とかスーパーとかで普通に力士とすれ違うんだが
     /´`"´``Y´´・""j⌒ ヽ
    {;;ノ´i、,. . ..|,, 、 、 ノヾ ;; ト
    / ;/i  __,人 _ _;;, ,/ヽ ヾ )
    ( .."ヽi、 ;;_ |^.. ;; ,i ,i` ノ;ノ
     ヽ iノヾ; 人__::": ヽ/"/
      ト \,ii== ===i!、/ /
      ,iヽ/  i i   \ノi、
      |    ,! !.     |


      ____
     /    \
   / ヘニヾ゙リン \(;;;;;(
  /=▲▼--▼▲=) ;;;;)    オフの力士はただのでかいニーチャンで別に格好良くない
  |    /(__人__)ヽ ;;;/|
  \    `⌒┃l;;;; /
  /´`''" '"´``Y'・"``'j⌒ ヽ
 { ,ノ' i| ,. ,、 ,,|,,. 、_/´ ,-,,.;;l
 '、 ヾ ,`''-‐‐'''" ̄_{ ,ノi,、;;;ノ
  ヽ、,  ,.- ,.,'/`''`,,_ ,,/
   `''ゞ-‐'" `'ヽ、,,、,、,,r'
     ,ノ  ヾ  ,, ''";l
    /=====、 ....====i、
                             ____
                           /      \
                         /_ノ   ヽ、_ \
                        / (●)  (●)   \   そりゃそうだ
                        |     (__人__)   u   |
                 r、     r、\    ` ⌒´     ,/
                 ヽヾ 三 |:l1 >   ー‐     ヘ
                  \>ヽ/ |` }             ヽ
                    ヘ lノ `'ソ イ            |  |
                     /´  / ./ |         |  |
                     \. ィ_ノ .|         |  |
                          |         |  |


                ′
        ____  、´
       / ヘニヾ゙リン\   つまり、先に合意した「美とは人間の肉体である」と合致しない・・・
     / =▲▼--▼▲\
    /    /(__人__)ヽ \  「美とは人間の肉体である」が間違っているか、
    |       `⌒┃    |
    \        ・   /   「やる夫は人間である」「オフの力士は人間である」が間違っているかのどちらかだな。
.
                               _____
                            /ノ  \. \
                         /(●)  (●) \
                (⌒(⌒(⌒ヽ     / ∪(__人__)     \    後者は極端すぎるお
             \ ヽ ヽ  (⌒)  |    `⌒ (⌒(⌒(⌒ヽ|
               ヽ:::::::::::    |.  \       ヽ ヽ ヽ  |
                ヽ   (  ヽ /       (⌒):::::::::::  |
                 \     V         !      |
                               ヽ     ノ

 

                           ____
                          /      \
                         /        \
                       /) ノ '  ヽ、       \   だいたい、力士が格好いいのは力士だからじゃなくて
                     / .イ(ー) (ー) u     |
                     /,'才.ミ) (__人__)       /   力士として体を使ってるからなんだってば
                    .| ≧シ' ` ⌒´        <
                   /  /                ヽ
.
.
.
.
.
                           ____
                          /    \
                          /          \
                        / ⌒    ー    \
                         |  (●)  (●)    |   ああ、そういうことか
                        \  (__人__)    /
                          /   `⌒ ´   イ`ヽ、
                     , '     ` ̄          \

 

     ____
   /      \
  /  ─    ─\
/    (●)  (●) \     やらない夫、筋肉ってだらけてるときにも美しいのかお?
|       (__人__)    |
./     ∩ノ ⊃  /     もしそうならポージングってやる意味なくない?
(  \ / _ノ |  |
.\ “  /__|  |      それと魅せる筋肉と相撲みたいに使う筋肉どっちが美しい?
  \ /___ /
.
.
                 _..、
                 と' ヽ            /`⊇
                   .ゝ<i                i ゝ.-‐'
               / 〃 i     _      | : ヽ
                ,'    ,|   / _, 、ヽ    ハ.. ハ
               ! ,. x' !    ! (=) (=)!    i ゝ. リ   もちろん筋肉はただあるだけでも美しいが
              Yー《` ヽ  | (_人_)!   ,r '¬ト.ィ
                |ヽ、i  ',.  ト.   ,i   {  〃ノi    ポージングにより一層輝きを増す!
               i   ヾ、./ `ヽ `ー‐' { /´},._ノ  リ
                 ゝ. .人、}  ゙ヽ.∨/´   i´ / ノ    スポーツや格闘技で躍動する筋肉もまことに素晴らしい!
                  ゙|  `i     Y    リ'´゙Y
                  !   ハ 。   i!   。!   !      その場に適した筋肉はあっても筋肉に貴賤はないだろ!
                  ∨´ーゝ-‐‐ '`-‐-.ハ. /
                    ', 、.X`、  i  `个ィ/
                    Y  ミ ` Y⌒∨ i'
                      | ヘY ー-<>ー1 |
                      {  ミ、._ :' __ノ リ
                    λ 人 `6´ i'./
                    /`ヾ、ミ._ー‐--'ノ!
                  ノ,.ゝi ヽ `¨´/:ハ

 

               ∩_
              〈〈〈 ヽ  「筋肉は美しい」
      ____   〈⊃  }  「取組中の力士は美しい」
     /⌒  ⌒\   |   |   「やる夫は特に美しくはない」
   /( ●)  (●)\  !   !
  / :::::⌒(__人__)⌒:::::\|   l   全部の前提を満たすには「美とは人間の肉体である」を修正して
  |     |r┬-|       |  /
  \     ` ー'´     //    「美とは人間の肉体を有効に使う・輝かせることである」にすればいいんだお!
  / __        /
  (___)      /       やる夫だって磨けば光るんだお!
.
                          ____
                        /    \
                       / ヘニヾ゙リン \
                     /=▲▼-▼▲==\    「女の子は美しい」という前提はどうする?
                     |   /(__人__)ヽ    |
                     \   `⌒┃    /
                      /´`"´``Y´´・""j⌒ ヽ
                     {;;ノ´i、,. . ..|,, 、 、 ノヾ ;; ト
                     / ;/i  __,人 _ _;;, ,/ヽ ヾ )
                     ( .."ヽi、 ;;_ |^.. ;; ,i ,i` ノ;ノ
                      ヽ iノヾ; 人__::": ヽ/"/
                       ト \,ii== ===i!、/ /
                       ,iヽ/  i i   \ノi、
                       |    ,! !.     |

 

         ____
       /      \
     /   _ノ  ヽへ\
    /   ( ―) (―) ヽ   リアル姉や妹がいる人はわかると思うけど
   .l  .u   ⌒(__人__)⌒ |
    \     ` ⌒r'.二ヽ<   すっぴんでだらけてる姿はかわいいかもしれないけど美しいとは・・・
    /        i^Y゙ r─ ゝ、
  /   ,     ヽ._H゙ f゙ニ、|
  {   {         \`7ー┘!
.
                ____
               /    \
             / ヘニヾ゙リン \(;;;;;(
            /=▲▼--▼▲=) ;;;;)   それ以上は聞かないでおこう
            |    /(__人__)ヽ ;;;/|
            \    `⌒┃l;;;; /    ともかくこれで「美とは人間の肉体を有効に使う・輝かせることである」に
            /´`''" '"´``Y'・"``'j⌒ ヽ
           { ,ノ' i| ,. ,、 ,,|,,. 、_/´ ,-,,.;;l   合意は修正された。
           '、 ヾ ,`''-‐‐'''" ̄_{ ,ノi,、;;;ノ
            ヽ、,  ,.- ,.,'/`''`,,_ ,,/   材料を増やすことでより「美とはなにか」が鮮明になったということだな。
             `''ゞ-‐'" `'ヽ、,,、,、,,r'
               ,ノ  ヾ  ,, ''";l
              /=====、 ....====i、

 

            ,、-''"~~ ''ーー-、
          ,r'~:'"::/"::" ii:::::ー、 ~''ー-
        ,,、-"/~ ::'"ー、 ノ:::   ~''' 、  実のところ、今行っている対話は弁証法と言ってプラトンが作ったわけではない。
     ,,、-'" ,,、z'__ ji,,, r、 十、:: ::::
    '--ー''フ ,/  ルー/j|. /  ~'' 、 :::    哲学的に正確な話は哲学史か近代哲学の話だから先生にでも聞いてくれ。
       / ル-/ j j(,/     '、 :: ::
      'ー ' | ,ノ |,ノ┃           だが、それ以前の問題である
.         ~    ▲、         ::、
             ▼▲         ~'-    「同じ材料と同じロジックを使って同じ方向に進んで同じ結論を共有」
               》
                ▲             こそがプラトンによる「哲学以前」の成果であり
               ▼▲━━┓

 

               」」      」」       」」       」」
           __  |    __  |    __  |    __  |
                 |          |          |          |   _|  _|  _|
           ___|    ___|    ___|    ___|
            ....______,,,,,,,,,,,,,,,,
           /               \
          ,,,,,ミミ           .;.;.;.;.;.;.;.;.;.;\
        /                .;.;.;.;.;  \
      /           ノ― - ..._ .;.;.;.;.;.;.;.;.;.;ノTi\
     /            ―‐__---- 二ツ)ノノ/∠リノ      西洋文明の全てのもとになっている
     /              <で・フ¨ヾ>三⌒〈・ラナリ_i、.
     i                `冖' ´ "´   ',¨ヾ',  i、     大学など「アカデミック」と呼ばれる場では特にそうだ。
      l                 (         / ヽ \
       l               /  ヽ、____.人__ノ /
      l               i   ∠..__ツ´   /
      ヾ               |      ー    /     ,>‐'つ
       ヽ、_                  .;.;.;.;   /    /.ノ ┃
          iヽ、_____          .;.;.;__ ノ    ! }/▲、
          ヽ        ヽ、_____´三/     { (´/▼▲
           !ヽ、           :;:;:;:;:;:;:;|         ヽ( イ- ) 》
           |   .            :;:;:;;|         \ `ヽ::: ▲
          /ヽ、 ..    .,.,.,.,.,.,.,.,.,.,.,.,.,.,.,.,.,.,|\.;      7゙<〉   ▼▲━━┓
                                 ::::::::::/:::::::\ ノノ

 

      _____     ━┓
    / ―   \    ┏┛
  /ノ  ( ●)   \  ・
. | ( ●)   ⌒)   |   やる夫も大学は出たけれど「対話」なんてしたことないお
. |   (__ノ ̄    /
. |         /    教授に議論という名の質問責めは受けたことはあるけど
  \_      _ノ\
    /´         |
.    |  /      |
                   ______
                  /         \
                /            \
               / {,.、- - 、 ! ,. - -,、}   ヽ、
              i  ,ヘ二__`_爪_~__二.ヘ    i、       おいおい理系の大学出たんなら卒論書いてるだろ?
              /   ヾニ・ニハ ハニ・ニフ    ;;;;;;;;;:;:::;;;)
            . /     /   ||    ヽ   ヽ;;;;;;;;;;::;;;::::;;;/  対話はその場その時でしか成立しないし、
             !   / i、_____人_____ノ \ (;;;;;;;;;;;::;;;ノ
             ヽ、      ィ--ェェェ   (;;;;;;;::::;;;ノ       今の複雑な世の中じゃ材料の合意で日が暮れちまう。
               ヽ、     个┃ /;:.::;ノ / ____
            ,,,,,イ"""=く i!゙゙、、、 ヽ ・;;;ノ/,,, ;;;ヾ⌒;;  ヽ   だから場所と時間にとらわれない手段―
          r"    ;) =、、  ,,,,,,:l:,,,,,, ___ ;;   j ヽi、:: i、
         (;;;;;;    i|    Y"""""   ヽ、 ,,.,/  ,, 、;;;;ヽ       ―論文を介して対話するんだよ
          )    >>>ヽヾ__ .|     ;;;; ::: |!i/   ;; )  ヽ、
            ヾ ノiヽ\__( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ--,,(<<<t    ノ,,   i
           ヽ.....ゞ  ヽ  ヽ;;;;;          ,,,___,,,    ノ
            i、 ;;;;  ヽ___   ;;;;;;;;;;_          ___,,/´
             i、       ゙゙̄ ̄;;´;;ノヽ、、、ー  ;;;;;;;;;/
              ゞ____、、、"ソ/ー―′ ヽ、____、、,,,,,,r´

 

    ,,,,,,,,/            "",;;";/;;;
   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄""""  ;;;;;
 /""":::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;        研究者は前提となる材料、つまり論文やデータにアクセスできる。
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::∠
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;        つまり、その気になれば材料を共有していることを確認できるから
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;         共有していることにして対話を始めよう、
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::、;;;
    ii||、、"::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,iヽ;;;;、      新しい論文で新しい材料とロジックを共有し、
    tヽ、~''ー;;;;-ヽ、tii:r-ーー'''''"ヽ,ヽ、,、、,,,,,,
::::::::::::::::::キー't弖z-、ゝヽ,ゝーー''z'''''モ五ラ''ーz'~"  新しい結論を共有しよう――そうやって真理に近づくんだ。
:::::::::::::::::` ''''' ̄'''";;;(、 彡彡;;;;;;;~""""""
ヽ;t::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;; | j' ''":::::;;;;;;;;;;;;::::::::::     真理には決してたどり着けない
ヽ,:::::::::::: :::::::::::;;;;;;;; i, リ   :::::;;;;;;;;;;;;:::::::::::::::
ヽ      ::::::: :::::;;;リノ ::  ,,,,,,:::::::::::::::::::::::     ―だがどこまでも近づくことはできる。
  ヽ:::::::::::"" ::::::: i  ::::'"   ::::ヽ,:::::::
   i、:::::::::::::::(:::: :::::\   ''"   /::::::::
    iヽ:::::::::::ヽ__、/\____ノ:::'"、、,,,,
      iヽ  " ::Y'王エ三ニ'''z、
    ,、-'";t:ヽ  :::::-、,,,,,,,,,,,,,、"-:::::::::::::::::::::,、
  ,、 '   ;;;;;t::ヽ   ;;;;;;;、、;;;;::::::::::::::   ,、 ';;;;
/  :::::;;;;;;;;;t:::ヽ  :::::::    ::'''" ,、 ';;;;;
  :::::;;;;;;;;;;;;;;;;t::::ヽ  ::::::::::::    ,、";;;;;;::::::::::
:::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::: t:::::ヽ  :::::::::::: ,、 ';;;;;;;;  ヽ:::::
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::  ヽ:::::~~ ''''''''''''";;;;;;;;;:::::   ノ:::::
""""""""   '":::::::::::::::

 

         ___
        /     \
      /  へ=i!i!リン\       理系の論文においては「再現可能」であることが最重視される
    /   ヾ・ ハi!iハ・フ \
    |     /(__人__)   |     これは一般には正しさを確認するためだと言われているが
    \     `⌒´   /
    /´`''" '"´``Y'・"``'j⌒ ヽ    プラトン的には再現可能でないと材料として共有できないからだ。
    { ,ノ' i| ,. ,、 ,,|,,. 、_/´ ,-,,.;;l
    '、 ヾ ,`''-‐‐'''" ̄_{ ,ノi,、;;;ノ    文系、特に過去の文献を基にする論文では「再現可能」は実現できないが
    ヽ、,  ,.- ,.,'/`''`,,_ ,,/
      `''ゞ-‐'" `'ヽ、,,、,、,,r'      出典を正しく扱うことで「出典そのものを材料として」共有できる。
        ,ノ  ヾ  ,, ''";l
       /=====、 ....====i、

 

         ___
       /     \       うっかり「自分で確認することが科学的である」と勘違いすることもよくあるが
    . /   ヘニヾリン \
    /    ヾ  ハiハ .フ ヽ     経験は共有できないからプラトン的には何の価値もなく対話は成立しない。
    |       (__人__) i
    . \      ` ̄´ /     正確には「誰でも確認できることが科学的である」というべきだな。
   .  )   ヾ____  く
   /´` |   ヽ  ・/,´´ ̄、~ヽ、  そして、残念ながら「それは何であるか」を問う他の方法は誰も見つけていない。
  /~ ヽ,,,  /"´`゙゙ヽ / " ̄ヽヽ;; ト、
 (    ヽ`  :::::::::::: Y:::::::  :ノ/r  }ヽ、 科学を否定する人がいたら、「主張に同意するべき根拠」を聞いてみてほしい。
 {  :::)  ヽ     ,,,,,|,,    i{  ::::::: ヽ、
  i、ノ     )ヽ:::::::::::::人:::::  丿 \ ノ ( ) 信じる信じないとかではない、意味のある答えだったら俺も知りたい。

 


            ,、-''"~~ ''ーー-、
          ,r'~:'"::/"::" ii:::::ー、 ~''ー-  一方的にしゃべっちまったな。一方的と言えばこの話は
        ,,、-"/~ ::'"ー、 ノ:::   ~''' 、
     ,,、-'" ,,、z'__ ji,,, r、 十、:: ::::      「プラトンこそが哲学の祖であり近代哲学はそれを再構築したものだ」
    '--ー''フ ,/  ルー/j|. /  ~'' 、 :::
       / ル-/ j j(,/     '、 :: ::  という一方的な視点での話だ。
      'ー ' | ,ノ |,ノ┃
.         ~    ▲、         ::、 部分的に「それはプラトンの主張ではなく誰それの主張だ」という人がいたら
             ▼▲         ~'-
               》         それはきっとその人のほうが正しい。プラトンは主張そのものを書いてはいないし
                ▲
               ▼▲━━┓   近代哲学を無視してプラトンが正しいというのはむしろプラトンが悲しむだろう。

 

           ____
         /       \
        /   ─   ― ヽ
      /    ( ●)  ( ●)'   プラトンを否定してる人っているの?
      |        (__人__)   |
      \       ` ⌒´  ,/
      /      ー‐   ヽ
                               ,.へ
   ___                          ム  i
  「 ヒ_i〉           ミ   ミ    __  ゝ 〈
  ト ノ                     ミミミ  iニ(()
  i  {               _____         |   ヽ
  i ヽヽ    (ミ彡    /ヘニヾリン \        i  ノ  }
  | :;:;:;:; i         /=▲▼--▼▲=\     {、:;:;:;:;:;λ  滅茶苦茶否定されてる。
  ト-ー┤.      /   /(__人__)ヽ   \   ,ノ    )
   ヽ   `` 、,_  |      ´ ̄`       |  '´ ハ  /   プラトンアリストテレスの否定=近代哲学と言っていい。
    ノ ノ   、´、,_\            /"   / /
      ;、         ̄`゙゙゙゙`Y´"""´ ̄   /  ;′    教会の構築した論理もプラトンのせいだとして否定されるし
        ヽ、~  ヽ    :;:;:;:;:;|::::     ノ / ~ノ
         ヾ   ト   ........人........   / r´′:;      プラトンの時代には人権とか平和の尊さとか無かったから
     / ̄ 二二二二二二二二二二二二二二二二ヽ
     | 悲報 |   プラトン否定されまくり      │|   倫理的にヒトラーのごとく否定されることまである。
     \_ 二二二二二二二二二二二二二二二二ノ

 

       ____
     /_ノ  ヽ、\
   /( ●)  (●).\    ヒトラーなみって・・・
  /   (__人__)  u. \
  |ni 7   ` ⌒´    . |n
l^l | | l ,/)      U  l^l.| | /)
', U ! レ' /      . . | U レ'//)
{    〈         ノ    /
..i,    ."⊃    rニ     /
 ."'""⌒´       `''""''''
         ____
       /    \
      / ヘニヾ゙リン \
    /=▲▼--▼▲=\    現代ですら・・・マイケル・サンデルは「これからの「正義」の話をしよう」で
    |    /(__人__)ヽ   |
    \    `⌒┃   /    「プラトンは洞窟の比喩で真理の超越を説いたのはいいが現実認識を無視している」
     /´`"´``Y´´・""j⌒ ヽ
    {;;ノ´i、,. . ..|,, 、 、 ノヾ ;; ト  なんて書いている。対話は現実認識から進んでいくのにどう読んだらそうなるのか・・・
    / ;/i  __,人 _ _;;, ,/ヽ ヾ )
    ( .."ヽi、 ;;_ |^.. ;; ,i ,i` ノ;ノ  あと「女性と奴隷に市民権がないことを容認している」として
     ヽ iノヾ; 人__::": ヽ/"/
      ト \,ii== ===i!、/ /    弟子のアリストテレスを断罪しているな。これではプラトンも同罪になってしまう。
      ,iヽ/  i i   \ノi、
      |    ,! !.     |    現在の基準で紀元前を断罪するってすげぇよ。さすが正義を語るだけはある。

 

         / ̄ ̄`ヽ
       /       ヽ
        {   ー-       \              プラトンは真理として「不変にして普遍なるイデア」を提唱したが
        )  (●)    ', \
        (●)  -、    }  .` - 、 __        「それは何であるか」を語る目標として作ったもので、
        \(_,ト-'   リ   ',    `ヽ._
          >--、/´).ハ  リ_,.>-''、⌒``ヽ、   イデア―真理自体には決してたどり着けないと言っていたんだが
        /´  ヽ' ./´  },. -'/´    `     ハ
       /! ヽ     }`,¨´   i          ::.   }  超越した思想の持ち主として叩かれてるんだよなぁ。
       / ,/ }   ;  ,ノ /  ヾ.{        ;    ハ
      {   ,ゝ. -'  ヘ./     〉‐- 、__.._ _,. -‐ イ,  }  超越性を主張したのは教会なんだがそれをプラトンのせいとして
     {  、 }ヘ、    \    /´ .;        ヒ'" !
    ,/ゝ-、 _{  ',     ヽ.__{  ::   :'       } ,!   キリスト教徒の近代哲学者が叩くという地獄のようなありさまだ。
    /     ゝ、ヘ ',     (´  ``ヽ    :       ! !
  { ,... _:    ``〉', 、   ヽ、      ',     / /
  }'"  `ー‐- 、..⊿ムヽ ヽ、  `     ,} ゝ ,/ /    当時「自由」とか「人権」とか「平等」とか「平和」とか無かったのを
   {    _,. -‐'´   ヘ.  `、.___   ノ  メ、, ;/
    }'  ´ ̄     ,..._ゝ、、ヽ、`¨¨´ ./゙Y′i'      プラトンの罪として叩く連中に至っては何がしたいのかわからん。
    ',ヽ     _,. '´/  ゝ、.___  ,/二)´  |
    ゝ-<二_メ'´        `¨`ー'    .リ      プラトンはむしろ「誰でも政治に関われるし主体的に関わろう!
              }  ,.、      ',    ,/)ヽ
           /,ハ、`'′       ;   ,./ ,/ヽ∧    女性だって参加すればできるようになる」とすら言ってるんだが。

 

            /    ;;;;;;;;;;ヽ    哲学的にはいろいろあるんだが、俺たちは技術屋だから
           /      ;;;;;;;;;;;;;、
           | ノ   \  ;;;;;;;;;;|   「同じ材料と同じロジックを使って同じ方向に進んで同じ結論を共有」する
           |( ●) (●) ;;;;;;;;;l
           | (__人__)  ;;;;;;;;il    ことをプラトンが確立して俺たちはそれを使っているとだけ覚えておけばいい。
            | ` ⌒´ ; ;;;;;;;.;;;;;ヽ
            !      ;;;;;;/i;;;;;;;;ヽ、     「それが何であるか」を合意できるからこそ新しい何かが作れるし
             \    ;;//;;;;;;;;;i;;;;;;ヽ、_
         /)    ̄ ̄;l; ;;;;;;;;;/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;`‐-、     必要な何かを借りてきて使うことができる。
    _   / :/      |;;;; /;;;;;;/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;  ヽ、
   ノヾ `‐-" l    , -‐"i  /;;;ノ;;;;;;;/;;;;;;,-‐;;;;;;;;;;;;;;;;;;゙ヽ, 物質的な話で使われるのはプラトンの本意ではないだろうが
   ノヽ      |  /  .ヽ!;;:/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;li
   l      ,  :l / ,    ;/       ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ   ありがたく使わせてもらうだろ。
   (      ヽノ .i i;    ;l     ,,    ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|
   ヽ、      \l/_,-‐ 、:;|     :;\,,-‐;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/
    ヽ、i      \i;;;;;:));|    ;;;;;;;;;/  ;;;;;;;;;;;;;;;;;;‐、;;;;;;;;;;/
      \      \´);;|    ;;;;;;;/  ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\;;;;

 

       ____
     /      \
   / ─    ─ \
  / -=・=-   -=・=- \   哲学をそんな扱いしていいのか
  |      (__人__)  U  |
  \     ` ⌒´     /
                     _,,..-‐‐-..,,
                   / ヽ    ヽ              __,,..∠
-..,,_                / (-)   ‐‐ .l         ,,..-''"~´     これは哲学の話じゃなくて
  `ヽ、                / ''''   (-) /        _/        /
     ' , ___.         / (⌒   '''' /.    _,,..-‐''"/        /   「俺たちはなにをやっているのか」の話だ。
      ヽ    `ヽ、.      ',   ̄ヽ__) /  ./..   /       /
       ヽ     ',-‐''´~/. ゝ..__,,../ |,,__/.      /      /     実際、プラトンは物質的な話を好きじゃなくて、
\_      .l、_,,..-‐" ̄゛''‐..,, | | /__..,,.-┴┴ 、   /    ,,-''"    ,,-''´
   ̄ヽ二二レ´        `.y'~´         ヽ/ ,,-‐''"/_,,..-‐''"´    科学技術的な面はアリストテレスが作った。
    ゝ,,__/         ヽ/            ',/   ,,イ  /     /
    ヽ、{          _/´                } -イ´ .|   l _,,..-''"  俺たちはさらにこれを借りているだけなんだよ。
"'''-..,,__  .l         _,'-             /  /   |  /´
      ~l.',         ∧               / ./    .|/
      ヽ\      _,.-'"/  ヽ、          ,〈 / l   ./
      .'y' `''‐‐'"   {    .`''‐..,,____.,,-´ .}  |   /
      .l    _,,..-‐‐,-‐..,,_       )   _,,イ   .| /
       .|    /   /   ヽ     ./  /   |   ./